アスベスト事前調査結果の報告対象|80㎡・100万円の判定
著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
アスベスト事前調査結果の報告対象|80㎡・100万円の判定
事前調査結果の報告は、建築物解体の工事部分80㎡以上など、法令に定める規模要件に当てはまる工事で必要です。判定では建物全体の延べ面積ではなく、工事に係る部分の床面積や、税込の請負金額を確認します。
報告の要否を確認しても、事前調査そのものの要否が変わるわけではありません。工事の対象、契約、発注者と元請業者の役割を順に確認し、提出先ごとの手続を混同しないように進めます。
事前調査結果の報告とは(対象・主体・時期の早見表)

事前調査結果の報告は、一定規模以上の解体等工事について、調査の結果を行政へ伝える手続です。石綿障害予防規則と大気汚染防止法はそれぞれ報告を定めているため、提出先と時期を分けて確認します。
本記事で扱う石綿障害予防規則 の現行版の最終改正施行日は2026-04-01です。大気汚染防止法 と大気汚染防止法施行規則 の現行版の最終改正施行日は2026-07-01で、いずれも2026-09-06に確認しています。
発注者が確認すべきなのは、調査の発注範囲と、元請業者が報告判定に使う工事情報が一致しているかです。見積書、契約書、図面で対象部分の表現が異なると、床面積や請負金額を誤って照合するおそれがあります。
| 区分 | 主な主体 | 報告先 | 時期 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 労働安全衛生法系の報告 | 元請業者等 | 所轄労働基準監督署長 | あらかじめ | 石綿障害予防規則第4条の2 |
| 大気汚染防止法系の報告 | 元請業者または自主施工者 | 都道府県知事 | 遅滞なく | 大気汚染防止法第18条の15第6項 |
| 届出対象特定工事の届出 | 発注者または自主施工者 | 都道府県知事 | 作業開始日の14日前まで | 大気汚染防止法第18条の17 |
労働基準監督署と都道府県知事への報告を分けて考える
石綿障害予防規則第4条の2第1項では、対象となる工事について、あらかじめ電子情報処理組織を使って所轄労働基準監督署長へ報告することが定められています。一方、大気汚染防止法第18条の15第6項では、調査を行ったときに、元請業者または自主施工者が遅滞なく都道府県知事へ報告します。
同じ工事について両方の報告が必要になる場合があるため、どちらか一方だけを前提に工程を組まないことが大切です。厚生労働省「石綿事前調査結果報告システム」 では、1回の操作で両制度に基づく報告を行える案内があります(2026-09-06確認)。
ただし、14日前の届出は報告とは別の手続です。届出対象特定工事に該当するかは調査結果を踏まえて確認し、届出の主体と期限を、元請業者による報告の予定とは分けて管理します。
報告する人と報告する時期を確認する
工事の一部を請負人に請け負わせる場合、石綿障害予防規則第4条の2第5項では、最も先次の請負契約における注文者である元請が、作業の全部についてまとめて報告します。関係請負人ごとに報告を分けるのではなく、元請側で工事全体の対象・契約・結果を把握しておく必要があります。
大気汚染防止法側では、元請業者または自主施工者が報告の主体です。発注者は報告の実施者ではありませんが、調査に要する費用を適正に負担するなど、調査へ協力する義務が定められています(大気汚染防止法第18条の15、2026-09-06確認)。
工事担当者、設計担当者、発注担当者で情報を分けて持つ場合は、報告の直前に工事範囲と契約額を再確認します。変更契約や追加工事があるときは、当初の判定だけを使わず、変更後の条件で確認することが必要です。
報告対象を判定する4つの条件

報告対象は、建築物解体、建築物改修、特定工作物、鋼製船舶の4区分で定められています。判定に使う面積・金額・対象物を取り違えないため、契約書と工事範囲を同時に確認します。
下表の80㎡、100万円、20トンの条件は、石綿障害予防規則第4条の2第1項に基づくものです(石綿障害予防規則、2026-09-06確認)。大気汚染防止法側の報告の規模要件は同じ80㎡・100万円で定められています(大気汚染防止法施行規則第16条の11、2026-09-06確認)。
| 区分 | 報告の判定条件 | 確認する値 |
|---|---|---|
| 建築物の解体 | 工事に係る部分の床面積の合計が80㎡以上 | 工事対象部分の床面積 |
| 建築物の改修 | 請負代金が税込100万円以上 | 契約上の請負金額 |
| 特定工作物の解体・改修 | 請負代金が税込100万円以上 | 対象物と請負金額 |
| 鋼製船舶の解体・改修 | 総トン数20トン以上 | 船舶の総トン数 |
建築物解体は工事に係る部分の床面積の合計80㎡以上
建築物の解体工事は、当該工事に係る部分の床面積の合計が80㎡以上なら報告の対象です。建物全体の延べ面積ではないため、一部解体では、実際に解体する部分を図面や工事内訳に沿って確認します。
80㎡という数値だけを先に見ると、調査義務と混同しやすくなります。事前調査は規模にかかわらず必要であり、80㎡は調査後の報告要否を判定する条件です。まず調査対象を整理する流れは、アスベスト事前調査の義務の対象と手続の違い で確認できます。
床面積の算定では、工事の対象外である部分を含めた数字を使わないようにします。逆に、複数の解体箇所が同じ工事に含まれる場合は、対象部分を漏れなく把握して、合計で確認することが大切です。
建築物改修・特定工作物は税込100万円以上などの条件
建築物の改修工事は請負代金100万円以上、特定工作物の解体・改修工事も請負代金100万円以上が報告対象です。厚生労働省の案内は請負金額を税込100万円以上としており、「100万円を超える」ではなく「100万円以上」で判定します(石綿障害予防規則第4条の2、2026-09-06確認)。
工作物では、全ての設備工事を同じ報告対象として扱いません。特定工作物に限るという条件があるため、対象物の名称、設置状況、工事範囲を確認し、個別の該当性が不明なときは所轄窓口に確認します。
請負金額を確認するときは、税抜表示と税込表示を一つの基準にそろえます。見積段階で複数の案がある場合も、実際に契約する工事範囲と金額を基にして、報告要否を元請業者と確認します。
契約と工事範囲を確認して報告を準備する

報告の判定は、発注書の名称や契約の本数だけで決まりません。同一の事業者による分割契約や、複数の請負人が関わる工事では、法令上の扱いに沿って工事全体を確認します。
分割契約の合算と元請による一括報告
同一の事業者が2以上の契約に分けて請け負う場合、石綿障害予防規則第4条の2第4項では一の契約として扱います。金額が小さい契約書を複数作っても、同じ事業者が請け負う工事なら、契約を合算して報告要否を判定します。
発注者側は、同じ工事に関係する見積書・契約書・追加工事の書面をまとめ、元請業者へ渡せる状態にします。元請業者は第5項に基づき関係請負人分を含めて報告するため、後から契約が追加・変更されたときも工事範囲と金額を更新して確認します。
契約書の工事名が細かく分かれていても、対象物や作業時期が連続する場合があります。形式だけで別工事と決めず、同一事業者が請け負う範囲を確認してから、報告の判定資料を整えます。
報告要否を誤らないための確認順

報告の判定では、面積と金額を確認する前に、工事の対象と事前調査の範囲を確定させます。報告が不要と判定された場合にも、調査記録や届出の確認が不要になるわけではありません。
調査義務と報告義務を別の表で確認する
確認の順番は、(1) 解体・改修する部分を特定する、(2) 事前調査を行う、(3) 調査結果と工事区分から報告要否を判定する、(4) 届出対象特定工事に当たるかを確認する、という流れです。この順序なら、80㎡・100万円を調査の免除条件として扱う誤りを避けられます。
判定表には、工事名だけでなく、対象部分の床面積、請負金額の税込・税抜の別、対象が建築物・特定工作物・鋼製船舶のどれかを記載します。報告先、提出する人、提出時期も同じ表で固定し、工程変更があれば調査結果と契約を改めて照合します。
この表は、発注段階の社内確認と、元請業者へ渡す情報の両方に使えます。調査結果を受け取った後に、報告対象かどうか、届出対象特定工事かどうかを別の欄で確認すると、面積基準と届出要件の混同を防げます。
よくある質問

80㎡はどの面積で判定するか
建築物解体では、当該工事に係る部分の床面積の合計で判定します。建物全体の延べ面積ではありません(石綿障害予防規則第4条の2第1項第1号、2026-09-06確認)。
一部解体では、どの部分を工事対象にしたかを図面と工事内訳で確認します。面積の資料を調査依頼時から保存しておくと、報告の判定根拠を共有しやすくなります。
100万円は税込か、どの境界か
厚生労働省の案内では、建築物改修などの報告要件は請負金額が税込100万円以上と示されています(石綿障害予防規則第4条の2、厚生労働省「石綿事前調査結果報告システム」、2026-09-06確認)。
契約を分けた場合はどう扱うか
同一の事業者が2以上の契約に分割して請け負う場合は、一の契約とみなして判定します(石綿障害予防規則第4条の2第4項、2026-09-06確認)。
まとめ
報告対象は、建築物解体の工事部分80㎡以上、建築物改修・特定工作物の請負金額100万円以上など、工事区分ごとに確認します。調査義務、報告、届出を切り分け、契約分割と工事範囲も含めて元請業者と照合することが重要です。
法令・制度に関する次の確認事項は、アスベスト事前調査の義務の対象と手続の違い とブログ記事一覧 で確認できます。
著者・監修
依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表
依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。石綿障害予防規則の事前調査義務・資格者制度・調査費用の構造について、e-Gov・厚生労働省等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。
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