法令・制度解説

アスベスト分析調査はいつ必要?みなし措置との違い

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

事前調査をしても石綿等の使用の有無が明らかにならない場合は、分析による調査が必要です。ただし、石綿等が使用されているものとみなして法令上の措置を講じる場合には、分析調査を行わない選択があります。発注時には、分析の有無だけでなく、その後の工事で必要となる措置と記録を確認します。

根拠は石綿障害予防規則第3条第5項・第6項と令和2年厚生労働省告示第277号です。分析調査を行う者の要件は2023-10-01に施行されており、条文と告示は2026-09-06に確認しています。

分析調査が必要になる場面

石綿の有無が明らかかを確認し分析とみなしを分ける早見図
石綿の有無が明らかかを確認し分析とみなしを分ける早見図

分析調査は、書面と目視による事前調査で石綿等の使用の有無を確認できなかったときに検討します。先に、どの材料について何が分からないのかを整理し、工事の対象部分と調査記録を対応させます。

調査時の状態次に確認すること記録に残す内容
使用の有無が明らか判断根拠と対象材料文書・目視の結果
使用の有無が不明分析調査の要否試料採取場所と分析結果
石綿ありとみなす必要な措置の内容みなした材料と根拠

使用の有無が明らかにならない場合

石綿障害予防規則第3条第5項は、事前調査を行ったにもかかわらず石綿等の使用の有無が明らかにならないとき、分析による調査を行うことを定めています。対象は、工事で解体・改修する部分の材料です。調査の依頼では、材料名だけでなく、使用箇所、工事内容、手元にある設計図書や写真を共有します。

分析が必要となる材料は、調査の途中で見つかる場合もあります。工事範囲の変更、隠れた部分の確認、文書と現地の状態の違いがあれば、何を確認済みとし、何を追加で確認するかを区別します。曖昧なまま工事の対象を狭めず、判断の根拠を報告書で確かめられる状態にします。

分析用の検体と調査対象の場所を対応させる図解
分析用の検体と調査対象の場所を対応させる図解

石綿ありとみなす場合

同項ただし書では、石綿等が使用されているものとみなして、労働安全衛生法とその命令に定める措置を講じる場合、分析調査を要しないと定めています。これは石綿がないと確認できたことを意味しません。分析を行わない場合にも、どの材料をみなしたかと、その後の措置を記録で確認する必要があります。

みなしを選ぶかどうかは、分析の費用だけで決める事項ではありません。分析結果を待つ工程、工事で講じる措置、対象材料の範囲、工期への影響を整理して、発注内容と工事計画が矛盾しないようにします。どちらが安いかを一律に決めず、必要な確認と措置を見積条件に反映します。

発注前に比べるのは方法ではなく判断条件

分析調査とみなし措置の判断条件を整理する発注担当者
分析調査とみなし措置の判断条件を整理する発注担当者

発注者は、分析の名称や検体数だけを並べる前に、なぜ有無が明らかにならないのか、工事でどの材料を扱うのかを整理します。その整理が、調査内容、記録、工事側の準備をつなぐ基礎になります。

工事で講じる措置を確認する

みなし措置では、石綿が使用されているものとして労働安全衛生法令上の措置を講じます。分析調査を行うか、みなすかを決める場面では、工事を担当する事業者と、対象材料、作業内容、予定する工程を共有します。分析結果だけを受け取っても、工事範囲が変われば確認の前提も変わるためです。

発注書や見積書には、調査対象の場所、採取が必要な場合の範囲、報告書に求める記載を含めます。材料の取り違えを防ぐため、図面上の位置と現地写真の位置を対応させ、追加の確認が必要になった場合の連絡方法も確認します。

費用の大小だけで決めない

分析とみなしの選択を、単一の金額で比べることはできません。分析では対象材料、採取の有無、検体数、納期、報告内容が関わり、みなしでは工事側で講じる措置の内容が関わります。対象範囲が異なる見積を同じ条件のように扱わないことが必要です。

公開料金を確認するときも、検体単価だけでは基本料金、採取、報告、納期の違いが分かりません。アスベスト分析の単価を比べる前にでは、条件をそろえるための確認点を整理しています。発注側は、工事の必要条件を先に伝え、見積の含まれる範囲を確認します。

依頼内容を記録へつなげる

調査依頼から分析報告書まで確認する流れ
調査依頼から分析報告書まで確認する流れ

調査の結果は、工事を進めるための記録にもなります。誰が分析を行うか、どの材料を確認したか、分析またはみなしの判断がどこに記載されているかを受領時に照合します。

分析を依頼する相手の要件

石綿障害予防規則第3条第6項は、分析調査を必要な知識と技能を有する者として厚生労働大臣が定める者に行わせることを定めています。令和2年厚生労働省告示第277号では、分析調査講習を受講し修了考査に合格した者などを掲げています。

分析調査を行う者の要件は2023-10-01に施行済みです。特定工作物の資格者調査が2026-01-01以降着工の工事から求められることとは、対象と根拠が異なります。見積や報告書では、事前調査を行う者と分析調査を行う者の役割を分けて確認します。

みなしとした材料を記録する

石綿障害予防規則第3条第7項は、材料ごとの石綿等の使用の有無を記録し、みなした場合はその旨も残すことを定めています。材料名や部位が工事図面と結び付いているかを見て、後から対象範囲を確認できる状態にします。

記録には、石綿が使用されていないと判断した材料については判断の根拠も必要です。分析を実施した場合は試料採取場所も記録事項です。調査結果を受け取るときは、対象材料の一覧、図面や写真との対応、調査終了日を確認します。

調査結果を受け取るときの確認点

受領する記録では、調査した部分、調査方法、材料ごとの判断、調査者の氏名、資格を示す書類の写しを確認します。石綿障害予防規則第3条第7項により、記録は調査終了日から3年間保存します。工事の途中で目視できるようになった材料があれば、確認可能になった時点で事前調査を行います。

アスベスト事前調査の義務では、調査、報告、届出の違いを整理しています。アスベスト調査報告書の見方とあわせて、受領資料に残る確認項目を確かめられます。関連する記事は法令・制度解説から確認できます。

分析の依頼内容には、対象材料の位置、採取に関係する工事範囲、既存資料の有無を記載します。分析を行うか、石綿含有とみなすかという判断の前提となる情報を、写真や図面番号とともに残すと、調査記録と工事対象を照合しやすくなります。

分析または石綿含有とみなす方法を検討する場面では、発注側が採取位置や材料名を断定しないことも大切です。既存の図面、写真、改修履歴を渡し、工事で触れる部位と現地で確認した部位の対応を調査者に確認します。材料が複数の区画にある場合は、同じ名称でも使用場所、施工時期、工事範囲が同じかを分けて記録します。結果を受け取る際には、採取・分析またはみなしの対象、判断根拠、工事対象の部位名を照合し、後から工事範囲が変わったときにも確認できるようにします。

工事範囲が複数の部屋や設備にまたがる場合、同じ材料名が資料にあっても、使用場所と工事内容が同じとは限りません。現地で確認した部位、採取した部位、分析または石綿含有とみなす対象を、図面や写真の位置情報と対応させます。調査の判断を受け取る際には、材料ごとの結論だけでなく、工事仕様書にある部位名と一致するかを確認し、追加する工事の範囲を別に整理します。

よくある質問

Q. 分析をしないことはできますか
石綿等が使用されているものとみなして、労働安全衛生法令に定める措置を講じる場合には、石綿障害予防規則第3条第5項ただし書により分析調査を行わない選択があります。みなしは石綿がないという結論ではないため、対象材料と講じる措置を工事計画と記録で確認します(石綿障害予防規則第3条、2026-09-06確認)。
Q. どちらが安いですか
分析調査とみなしの費用は、対象材料、採取、検体数、報告内容、納期、工事側で必要となる措置によって変わるため、一律には決められません。見積では対象箇所と含まれる範囲を確認し、石綿の有無が明らかにならない理由と工事計画を依頼先に共有します。
Q. 分析方法は何を選べばよいですか
発注時には、対象材料、採取の有無、報告書に記載される内容、納期を依頼先に確認します。石綿障害予防規則第3条第6項と令和2年厚生労働省告示第277号に基づき、分析調査を行う者の要件も見積や報告書で確認します(令和2年厚生労働省告示第277号、2026-09-06確認)。

出典

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