選び方・比較

図面がない建物のアスベスト事前調査|依頼前に確認すること

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

設計図書等の文書が存在しない場合は、その方法による確認は求められません。一方で目視による確認が基本であり、構造上目視できない材料は確認可能になった時点で事前調査を行います。図面がないことだけで、調査ができない、または不要になるわけではありません。

根拠は石綿障害予防規則第3条です。文書・目視・確認可能になった時点の調査に関する条文を2026-09-06に確認しました。依頼前には、図面の有無だけでなく、解体・改修する範囲と手元にある情報を分けて整理します。

図面がない場合の調査の考え方

図面の有無と目視確認と後日確認を分ける早見図
図面の有無と目視確認と後日確認を分ける早見図

図面がない案件では、資料を探す作業と、現地で確認する作業を混同しないことが大切です。設計図書が存在しない場合には文書確認の方法はこの限りではありませんが、工事に係る材料の確認が不要になる意味ではありません。

状況確認すること依頼時に伝える情報
文書がある対象部分と資料の対応図面名、版、作成年、範囲
文書がないないことと理由所有者の保管状況、探索した資料
目視できる現地で確認する部位工事範囲、立入り条件、写真
目視が困難見えない理由と位置露出する工程、確認予定
過去資料がある補助情報として共有写真、改修記録、設備台帳

文書が存在しない場合の扱い

石綿障害予防規則第3条第2項は、設計図書等の文書を確認する方法と目視で確認する方法を定めています。設計図書等の文書が存在しない場合は、文書確認の方法はこの限りではありません。発注者は、図面が見つからないことを隠さず、どの資料がないかを依頼先に伝えます。

文書がない理由が、建築時に作成されなかったことなのか、保管先が不明なことなのか、改修部分だけが残っていないことなのかによって、調査者が確認する情報は変わります。依頼時には、建物全体の資料と、工事対象部分の資料を区別して伝えます。

図面がなくても、登記の情報、修繕履歴、過去の見積書、設備台帳、写真が残っていることがあります。これらは石綿の有無を発注側が決める材料ではなく、現地確認する場所や改修の履歴を共有する情報として役立ちます。

目視で確認する範囲

目視では、解体または改修の作業に係る部分の材料を確認します。壁、天井、床、屋根、設備周辺など、工事で触れる箇所を図面がない状態でも写真や現地案内で示します。建物全体を漠然と示すのではなく、作業する部位を具体化します。

現地で確認する日には、立入りが必要な室、鍵の管理者、設備停止の可否、荷物の移動が必要な場所を事前に整理します。調査対象の部位を見られないまま工事日を迎えないよう、工事担当者と施設管理者の連絡方法も確認します。

目視による確認で材料の使用の有無が明らかにならない場合は、分析を行う方法または石綿が使用されているものとみなす方法があります。どの方法を使うかは材料の状態と調査の結果によるため、発注者が写真だけで結論を出しません。

依頼前に整理できる情報

工事対象部分と写真と改修記録を調査依頼にまとめる図
工事対象部分と写真と改修記録を調査依頼にまとめる図

図面がない場合でも、工事対象を伝えるための情報は整理できます。資料の不足を埋めるために推測を書くのではなく、分かる情報と分からない情報を分け、現地で確認する必要がある箇所を明確にします。

工事対象部分と建築時期

解体、改修、補修、設備更新のどの作業を予定しているかを部位ごとに書き出します。壁を撤去する、天井に開口を設ける、床材を更新するなど、工事で触れる範囲を写真や簡単な見取図に示します。部屋名や位置が分かれば、正式な図面がなくても対象の共有に使えます。

建築時期については、完成年だけでなく、増築、改築、用途変更、大規模な改修があればその時期も整理します。建築時期の情報は調査方法の確認に関係しますが、資料が一部しかない場合には、対象部分と資料の対応を確認します。

工事の見積書に記載された部位と、調査依頼の部位が食い違わないよう、同じ呼び方を使います。たとえば「北側の倉庫」だけでなく、入口から見た位置、天井・壁・床のどこを扱うかまで記録します。

手元にある写真や改修記録

古い写真、修繕記録、設備の点検簿、過去の調査記録は、現地の状況を確認する補助資料になります。写真の撮影日が不明でも、撮影場所、方向、写っている部位が分かる情報を添えます。写真だけから材料の石綿使用の有無を断定しません。

過去の改修記録があるときは、どの部位をいつ改修した資料かを分けます。建物全体の記録と、今回の工事範囲に関係する記録を混ぜないことで、調査者が確認する場所を判断しやすくなります。

資料を共有する際は、原本の有無、コピーの作成日、どの部分が欠けているかを一覧にします。資料が見つからない箇所も含めて伝えることで、現地確認の対象を後から探し直す手間を減らせます。

調査後までの確認

目視困難材料と調査記録と見積範囲を確認する図
目視困難材料と調査記録と見積範囲を確認する図

図面のない案件では、調査後の記録が工事対象を確認するための重要な資料になります。調査した部分と、確認できなかった部分を区別し、工事の変更や材料の露出があったときに照合できるようにします。

目視困難材料がある場合

壁の内側、天井裏、被覆の内部など、構造上目視が困難な材料については、確認可能になった時点で事前調査を行います。最初の調査時に見えない部位は、位置、見えない理由、確認できる見込みの工程を記録します。

工事で初めて見える状態になる場合は、どの作業の後に確認できるかを工程表に置きます。調査者に連絡する時期、作業を進めない部位、写真を残す方法を工事担当者と共有します。追加確認の対象を、最初の調査の対象と区別できるようにします。

調査記録に残る内容

調査終了後の記録には、調査した部分、調査方法、材料ごとの石綿等の使用の有無、石綿なしと判断した根拠などが残ります。図面がない場合は、室名、部位名、写真番号、簡単な見取図などで、調査対象の位置を確認できるかを見ます。

記録は調査終了日から3年間保存する扱いです。工事の見積、工程表、調査時の写真を記録とともに整理し、対象部分が後から分かるようにします。工事範囲が広がる場合は、既存の記録で確認済みの部位と、新たに確認する部位を分けます。

見積で確認する範囲

見積では、図面の有無、現地で確認する部位、写真や改修記録の確認、目視困難な材料がある場合の確認時期、採取・分析の可能性、報告書の内容を確認します。図面がないことを理由に、調査対象が曖昧なままにならないようにします。

アスベスト事前調査の義務、解体前のアスベスト調査の流れ、アスベスト調査報告書の見方では、資料の有無と調査記録の確認点を整理しています。関連する記事は調査の進め方から探せます。

図面がない建物の調査記録を確認する図
図面がない建物の調査記録を確認する図

図面がない建物では、写真と見取図を調査者、工事担当者、所有者の間で共通の資料にします。写真に撮影場所、方向、部屋名、壁・天井・床などの部位を記載すると、現地確認の範囲を伝えやすくなります。工事対象が増えたときは、以前の写真に写る部分だけで確認済みとせず、追加した部位を新たに整理します。調査記録にある位置情報と、工事見積にある部位名を照合することで、図面がない場合にも対象範囲を確認できます。

見取図は正式な設計図書の代わりに材料の有無を決めるためのものではありませんが、部屋の位置、出入口、窓、設備、工事する壁や天井を共有する資料になります。写真に番号を付け、見取図の同じ位置に番号を対応させると、調査記録を受け取った後に確認しやすくなります。工事対象を追加する場合には、その見取図にも追加部位を記載して依頼内容を更新します。

よくある質問

Q. 図面がないと調査はできませんか
図面がなくても調査は行います。設計図書等の文書が存在しない場合は文書確認の方法はこの限りではなく、目視で確認します。工事範囲、写真、改修記録など分かる情報を依頼先に共有します。
Q. 古い写真だけでも役に立ちますか
写真は、現地の部位や過去の状態を共有する資料として役立ちます。撮影場所、方向、写っている部位を添えて渡しますが、写真だけで石綿の使用の有無を断定せず、調査者による確認につなげます。
Q. 壁の内側が見えない場合はどうしますか
構造上目視できない材料は、確認可能になった時点で事前調査を行います。見えない部位の位置と理由、露出する工程を記録し、工事担当者と調査者の連絡時期を確認します(石綿障害予防規則第3条第9項、2026-09-06確認)。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.
    石綿障害予防規則(laws.e-gov.go.jp)