法令・制度解説

アスベスト事前調査結果の報告は誰がする?元請と下請の役割

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

9分
目次

報告主体の確認では、調査を実施した人だけでなく、工事の請負関係をたどります。工事の一部を請負人に請け負わせている場合、石綿障害予防規則第4条の2第5項では、最も先次の請負契約における注文者である元請が、関係請負人分をまとめて報告します。

「下請が調査を手配した場合、下請がそのまま報告するのか」と迷うことがあります。調査を行った者、工事を請け負う者、発注者は同じとは限らないため、呼び方だけで役割を決めないことが必要です。

この記事では、事前調査結果の報告制度における元請・下請・発注者の確認方法を説明します。契約一般の責任分担や個別契約の法的評価には踏み込みません。

本記事で分かること

  • 報告制度で確認する元請の位置づけ
  • 関係請負人分をまとめる意味
  • 発注前に整理する工事・契約・書面の情報

結論:事前調査結果の報告は元請がまとめて行う(早見表)

報告の主体は、下請の有無ではなく元請の位置づけで確認します。 報告の規模要件そのものは、アスベスト事前調査結果の報告対象で確認できます。対象工事に当たる場合、誰が工事全体の報告を担うかを契約関係から整理します。

発注者・元請・関係請負人の報告主体を示す早見図
発注者・元請・関係請負人の報告主体を示す早見図
立場報告制度で確認すること書面で確認する情報
発注者工事を発注する立場発注内容・説明書面
元請関係請負人分をまとめて報告する立場契約関係・報告の準備
関係請負人工事の一部を請け負う立場担当する範囲・調査情報

元請に当たる事業者を確認する

石綿障害予防規則第4条の2第5項では、工事の一部を請負人に請け負わせている事業者があるとき、その仕事の作業の全部について、最も先次の請負契約における注文者が報告を行うと示されています。実務では、報告制度上の元請を契約のつながりで確認します。

会社名の呼び方や現場での呼称だけでは、関係を取り違えることがあります。発注者から誰が直接請け負い、さらにどの範囲を誰へ請け負わせているかを、契約資料で確認します。

関係請負人分をまとめる意味

関係請負人が工事の一部を担当する場合でも、報告は工事全体の情報をまとめて確認します。下請ごとに別々の対象として扱うのではなく、元請が必要な範囲を把握できるよう、調査結果や工事範囲を共有します。

報告の内容を下請へ丸投げするという意味ではありません。どの部分を誰が施工するか、調査対象はどこか、報告に必要な情報は何かを、元請が確認できる形に整えることが重要です。

報告制度でいう元請の位置づけ

元請は、最も先次の請負契約における注文者として整理されます。 発注者、元請、下請の言葉を日常的な役割だけで使うと、報告制度の主体を見失うことがあります。

請負関係から報告主体を確認する契約関係図
請負関係から報告主体を確認する契約関係図
確認する関係確認したい内容報告との関係
発注者と直接請負人誰が工事を直接請け負うか元請の確認材料
元請と関係請負人誰がどの作業を請け負うかまとめる情報の範囲
自主施工者請負契約によらず施工するか元請と別に確認する

発注者と元請を区別する

発注者は工事を発注する立場であり、元請は請負関係の中で工事を受ける立場です。両者が同じ言葉で呼ばれるケースがあっても、報告制度では契約書や発注書で関係を確認します。

発注者側は、報告の主体を自ら決めるのではなく、工事の請負関係を元請に確認します。調査結果の書面説明を受ける役割と、事前調査結果を報告する役割も別に見ます。

下請と関係請負人を区別する

工事の一部を請け負う事業者がいる場合、その担当範囲は調査情報の整理に影響します。たとえば内装、設備、撤去の作業が分かれていても、工事全体で報告対象を確認するため、元請へ範囲を共有します。

下請が調査に関わったかどうかだけで報告主体を決めません。契約上の位置づけ、工事の一部を請け負わせているか、報告の対象工事に当たるかを順に確認します。

自主施工者の場合を分けて考える

請負契約によらず自ら施工する場合は、自主施工者として扱う規定があります。元請がいるケースと同じ表現で説明せず、工事が請負によるものかを先に確認します。

大気汚染防止法の報告では元請業者または自主施工者という主体の書き分けもあります。手続によって主体が異なるため、14日前届出における発注者・元請の役割とは別の確認表で扱います。

工事情報を一つに整理する

報告対象の判断には、工事範囲と契約情報を合わせて整理します。 報告を行う元請が、関係請負人分を含めた工事の情報を確認できる状態をつくります。

工事区分・規模・契約情報を元請へ集約する図
工事区分・規模・契約情報を元請へ集約する図
情報確認する内容まとめる相手
工事区分解体か改修か、対象物は何か元請
規模情報床面積または請負代金の条件元請
契約情報分割の有無、担当範囲元請

解体か改修かを確認する

建築物の解体、建築物の改修、特定工作物の解体・改修、鋼製船舶の解体・改修では、報告対象を確認する条件が異なります。工事名だけでなく、何を解体・改修するのかを範囲表に記します。

特定工作物に関する工事では、改修だけでなく解体も対象として確認します。対象物の該当性を急いで決めず、図面や設備台帳を使って情報を整理します。

面積または請負代金を確認する

建築物の解体では、当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上かを確認します。建築物の改修や特定工作物の解体・改修では、請負代金100万円以上という基準を別に確認します。

これらは事前調査そのものを省く基準ではありません。元請へ渡す情報として、工事区分、対象部分、面積または請負代金を対応させ、報告要否を確認できる状態にします。

分割契約の有無を確認する

同一の事業者が二つ以上の契約に分割して請け負う場合は、一の契約で請け負ったものとみなして判定します。契約書を複数に分けているかではなく、請け負う事業者と工事の関係を確認します。

分割契約がある場合も、ここでは報告をまとめる元請が必要な情報をそろえる視点に留めます。契約の枚数だけでなく、誰がどの工事を請け負うかを工事資料で確認してください。

発注者が確認できる書面

発注者は、報告主体と説明書面を別のものとして確認します。 発注者が受け取る調査結果の説明と、元請が行う報告は、対象・相手・目的が同じではありません。

発注者が受け取る説明書面と元請の報告準備を分けた図
発注者が受け取る説明書面と元請の報告準備を分けた図
書面・情報発注者が確認する点元請が確認する点
工事範囲表依頼した範囲と合うか関係請負人分を含むか
調査結果の書面結果・対象・説明内容報告に必要な調査情報
契約関係資料発注先の関係報告主体と担当範囲

調査結果の書面説明を見る

大気汚染防止法では、元請業者が調査結果を発注者へ書面を交付して説明することが定められています。発注者は、工事場所、調査結果、特定工事に当たる場合の情報などを、依頼した範囲と照合します。

書面説明を受けることと、石綿障害予防規則に基づく報告の提出主体になることは別です。説明書面で見たい事項を、報告の提出先や操作の話と混ぜないようにします。

報告の準備状況を確認する

報告対象となる可能性がある工事では、発注者側も元請に工事範囲や契約情報を共有します。いつまでに何を提出するかは、手続ごとに異なるため、工程表に調査、報告、届出を別々に並べます。

罰則を強調して急がせるのではなく、対象工事、主体、資料を順番に確認します。アスベスト調査の対応の流れも参照し、準備状況を確認してください。

発注者が工事範囲と契約情報を元請へ共有して報告準備を確かめる図
発注者が工事範囲と契約情報を元請へ共有して報告準備を確かめる図

契約資料を確認するときは、契約書の表題だけで役割を決めず、工事全体の発注関係、施工範囲、関係請負人との関係を並べます。元請が把握する情報と、個別の施工担当者が持つ情報を早めに集めると、報告の対象確認を進めやすくなります。

工事範囲が途中で変わる場合は、変更後の範囲を誰が把握し、どの資料に反映するかも決めておきます。報告に必要な情報を特定の人だけが持つ状態を避け、案件資料として共有できるようにします。

まとめ

アスベスト事前調査結果の報告は、調査を行った人の名称だけでなく、請負関係から元請を確認します。工事区分、規模情報、関係請負人の担当範囲を元請が照合できる形に整えることが、報告の確認につながります。

報告の役割に関する次の確認事項は、法令・制度解説の記事一覧から確認できます。

よくある質問

Q. 下請が調査した場合も元請が報告しますか
工事の一部を請負人に請け負わせている事業者がある場合、石綿障害予防規則第4条の2第5項では、最も先次の請負契約における注文者である元請が、関係請負人分をまとめて報告します。誰が調査を手配したかだけで、報告主体を決めません。
Q. 元請とは誰を指しますか
報告制度では、工事の一部を請負人に請け負わせている場合に、最も先次の請負契約における注文者を元請として確認します。発注者、直接の請負人、関係請負人の関係を契約資料で整理し、現場での通称だけで判断しません。
Q. 発注者が事前調査結果を報告する場面はありますか
手続によって主体は異なります。石綿障害予防規則の報告では元請が関係請負人分をまとめる規定を確認し、大気汚染防止法の報告では元請業者または自主施工者を確認します。発注者が行う14日前届出とは別の手続として整理します。

出典

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