アスベスト工事を分割契約した場合の報告|100万円の合算を確認
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
同一事業者の分割契約の合算を確認することが、アスベスト事前調査結果の報告で請負代金を扱う際の出発点です。石綿障害予防規則第4条の2第4項では、同一の事業者が二つ以上の契約に分割して請け負う場合、一の契約で請け負ったものとみなして判定します。
「工程ごとに契約書を分けたので、報告の確認も別々でよいのか」と迷うことがあります。契約書の数だけを見ると、同じ事業者が担う工事のつながりを見落とします。
この記事では、分割契約の合算に主題を絞り、発注前にそろえる契約情報を整理します。80平方メートル・100万円・元請の役割をまとめて説明する総覧ではなく、合算の確認方法を扱います。
本記事で分かること
- 一の契約とみなす分割契約の考え方
- 同一事業者・工事内容・請負代金を対応させる方法
- 元請が確認できる形で契約情報をまとめる手順
結論:同一事業者の分割契約は合算して報告を確認する(早見表)
契約書の枚数ではなく、同一事業者が請け負う工事の関係を確認します。 報告の規模要件全体は、アスベスト事前調査結果の報告対象で確認できます。分割契約がある場合は、まず同じ事業者が複数の契約を請け負っているかを資料で整理します。

| 確認する点 | 見る資料 | 確認の目的 |
|---|---|---|
| 請負事業者 | 契約書・発注書 | 同一事業者かを確認する |
| 工事内容 | 範囲表・工程表 | 工事の関係を確認する |
| 請負代金 | 契約金額の整理表 | 合算して基準を確認する |
一の契約とみなす場面を確認する
石綿障害予防規則第4条の2第4項は、同一の事業者が二つ以上の契約に分割して請け負う場合を示しています。意図的に分けたかどうかを条件にするのではなく、同じ事業者が複数契約を請け負う関係を確認します。
契約名が「解体」「補修」「設備更新」のように分かれていても、各契約の請負事業者と工事範囲を並べます。一つの工事に関係する情報を見渡せるようにしてから、報告対象の確認へ進みます。
100万円以上の基準を確認する
建築物の改修工事や特定工作物の解体・改修工事では、請負代金100万円以上という報告の基準を確認します。基準の表現は「100万円を超える」ではなく「100万円以上」です。
分割契約の合算を確認する場合も、金額だけを独立して見るのではなく、同一事業者と工事の関係を合わせます。どの工事区分で請負代金の基準を使うかは、対象物と作業内容を整理して確認します。
分割契約を確認するための整理
契約名より、請け負う事業者と工事のつながりを記録します。 工程、部位、担当範囲を対応させると、分割された書類の関係を確認しやすくなります。

| 確認項目 | 整理する内容 | 記録の例 |
|---|---|---|
| 事業者 | 契約ごとの請負事業者 | 名称・担当範囲 |
| 工事内容 | 解体・改修する部位 | 建物・設備・作業の区分 |
| 契約情報 | 契約日・請負代金・変更 | 契約ごとの一覧 |
請負事業者をそろえる
まず、契約ごとに請負う事業者の名称を一覧にします。同じ会社名であっても、工事の対象や担当範囲が分からなければ、契約間の関係を確認できません。
元請と関係請負人がいる場合は、誰がどの契約を請け負うかを分けて整理します。報告制度上の元請の位置づけは、元請と下請の役割で確認できます。
工事ごとの内容を並べる
契約書ごとに、対象建築物・工作物、解体か改修か、部位、予定する作業を並べます。工程が異なる契約でも、同一の事業者が請け負う工事としてどのようにつながるかを確認します。
書類の表題だけで工事内容を判断しないことが大切です。「補修」「付帯工事」などの言葉だけでなく、実際にどの部分を改修・撤去する予定かを範囲表で確認します。
契約金額を対応させる
請負代金は、契約ごとに工事内容と対応させて整理します。変更契約がある場合は、いつ何の範囲が変わったかも確認し、古い金額だけで判断しないようにします。
請負代金の一覧は、比較や優劣を付けるための表ではありません。報告の確認に必要な契約関係を追うために、同一事業者が請け負う範囲を可視化する資料です。
同一事業者の契約だけが合算の対象になるため、発注者側の社内区分や契約書の表題だけで分けず、請負人ごとの工事内容と金額を照合します。
報告対象になる工事を分ける
建築物と特定工作物では、基準に使う情報を分けて確認します。 分割契約の合算は、対象工事の区分を省略する理由にはなりません。

| 工事の対象 | 報告確認で使う主な情報 | 分割契約で確認する点 |
|---|---|---|
| 建築物の改修 | 請負代金 | 同一事業者の契約を対応させる |
| 特定工作物の解体・改修 | 請負代金 | 対象工作物と契約を対応させる |
| 建築物の解体 | 工事対象部分の床面積 | 請負代金の表と混ぜない |
建築物改修の請負代金を見る
建築物の改修では、請負代金100万円以上を報告の基準として確認します。改修範囲を契約ごとに分けている場合でも、同じ事業者が二つ以上の契約に分けて請け負うなら、一の契約とみなす規定を確認します。
請負代金の数値だけでなく、対象が建築物の改修かを確認します。解体工事の面積基準と同じ表に混ぜると、どの条件を確認したのか分かりにくくなります。
特定工作物の解体・改修を分ける
特定工作物では、解体工事と改修工事のいずれも請負代金100万円以上の基準を確認します。工作物が特定工作物に当たるか、工事が解体・改修のどちらかを、設備台帳や図面で確認します。
分割契約の合算は、対象工作物を個別に断定するためではなく、契約情報を整理するための観点です。対象工事の確認手順は、アスベスト事前調査の対応の流れも参照してください。
解体の床面積基準を別に見る
建築物の解体工事では、当該工事に係る部分の床面積の合計80平方メートル以上を確認します。請負代金100万円以上の基準と取り違えず、対象工事に応じて使う情報を分けます。
一つの発注に解体と改修が混在する場合は、工事区分ごとに行を分けます。契約をまとめた一覧にも、床面積を使う部分と請負代金を使う部分が分かるように記載します。
元請へ渡す契約情報をまとめる
報告主体が必要な情報を早めに集めると、手続の確認がしやすくなります。 分割契約の資料は、契約書を並べるだけではなく、元請が工事全体を確認できる形に整えます。

| 情報 | 元請へ共有する内容 | 確認する時点 |
|---|---|---|
| 契約書 | 事業者・対象・請負代金 | 発注時 |
| 範囲表 | 工事場所・作業内容 | 調査依頼時 |
| 変更情報 | 追加・変更した対象と金額 | 工事内容の変更時 |
契約書の情報を整理する
契約書の名称、請負事業者、対象工事、請負代金、契約日を一覧にします。書類が複数部門から出ている場合も、同じ案件に関係する契約として確認できるよう、工事範囲を対応させます。
発注者側は、報告の代行方法を決めるのではなく、元請が報告対象を確認できる材料を渡します。誰が最終的に報告するかは、請負関係を踏まえて確認します。
変更の有無を確認する
工事範囲や請負代金が変更されると、分割契約の整理も更新が必要になります。変更前の契約だけを参照せず、追加する部位や作業、変更契約の有無を確認します。
調査結果を受け取った後に工事範囲が広がる場合も、対象の追加を記録します。契約情報、工事範囲、調査対象を同じ時点の資料で照合することが重要です。

分割契約がある案件では、契約ごとに工事名が違っていても、同じ事業者が請け負う工事の場所、内容、時期を一覧にします。変更契約や追加工事がある場合も、契約書を別ファイルに保管するだけでなく、一覧へ反映して確認の前提をそろえます。
この整理は、報告の要否を契約書の表題だけで決めないためのものです。対象工事の確認、報告主体の確認、契約関係の確認を順に行い、判断の根拠となった資料を案件単位で保管してください。
まとめ
分割契約がある場合は、契約書の枚数ではなく、同一事業者が請け負う工事の関係を確認します。事業者、工事内容、請負代金、変更情報を対応させ、一の契約とみなす規定に沿って報告の確認へつなげます。
報告の契約情報に関する次の確認事項は、法令・制度解説の記事一覧から確認できます。
よくある質問
- Q. 工事を二つの契約に分ければ100万円未満として扱えますか
- 同一の事業者が二つ以上の契約に分割して請け負う場合は、石綿障害予防規則第4条の2第4項により一の契約で請け負ったものとみなして判定します。意図の有無を条件にせず、請負事業者と工事内容を対応させて確認します。
- Q. 分割契約で確認するのは誰の契約ですか
- 契約ごとの請負事業者を確認し、同一の事業者が二つ以上の契約を請け負っているかを整理します。元請と関係請負人がいる場合は、各者の担当範囲も分け、元請が工事全体の情報を確認できるようにします。
- Q. 建築物解体の面積基準と請負代金基準は同じですか
- 同じではありません。建築物の解体工事では当該工事に係る部分の床面積の合計80平方メートル以上を確認し、建築物の改修や特定工作物の解体・改修では請負代金100万円以上を確認します。分割契約の整理でも、工事区分ごとに使う基準を分けます。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)(laws.e-gov.go.jp)
- 2.厚生労働省 石綿事前調査結果報告システム(ishiwata.mhlw.go.jp)