シーン・事例

工場の加熱炉を解体・改修する前のアスベスト事前調査

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

加熱炉は告示第278号第2号に掲げられる工作物で、2026-01-01以降に着工する工事では、告示第276号第4号の工作物石綿事前調査者による調査が必要となります。個別設備が該当するかは、設計図書、用途、工事対象部分を確認して判断します。

告示第276号、告示第278号、石綿障害予防規則は2026-09-06に確認しました。加熱炉という設備名だけで依頼を済ませず、炉本体、周辺の材料、撤去・改修する部位を整理します。

加熱炉の工事前に確認すること

加熱炉の用途と工事範囲と確認資料を整理する図
加熱炉の用途と工事範囲と確認資料を整理する図

加熱炉の解体・改修では、停止、開口、炉体の撤去、周辺設備の更新などで、確認できる部位が変わります。設備台帳の名称と現地で呼ばれる名称が異なることもあるため、用途と設置場所を資料で示し、今回の工事に係る範囲を分けます。

確認する項目整理する内容資料の例
設備の名称台帳の名称、炉の用途、設備番号設備台帳、配置図
工事対象炉本体、周辺部材、接続部分工事仕様書、写真
設置場所棟、階、工場区画、設備列平面図、現地案内図
既存資料図面、改修履歴、過去の記録設計図書、点検記録
確認時期停止日、開口予定、着工日工程表、停止計画

告示に掲げられる加熱炉

告示第278号第2号には加熱炉が掲げられています。自社の設備名称に「炉」の文字があることだけで直ちに同じ対象と決めず、加熱するために用いる設備か、どの部分を解体・改修するかを確認します。図面や設備台帳にある用途を、依頼内容に添えます。

炉本体だけでなく、周囲の被覆、保温材、接続部、配管などに工事が及ぶ場合は、部位ごとに分けます。設備の更新で既設の一部を残すときも、残す部位と撤去する部位を図面に示し、調査対象を工事範囲と対応させます。

個別設備の扱いを確認する

設備の個別該当性は、名称の近さだけで確定しません。設備の用途、構造、設置位置、工事の内容を調査者に示し、告示との対応を確認します。台帳が古い場合は、現地写真、改修履歴、配管図なども併せて共有します。

停止中でないと見られない部位や、撤去後に露出する材料があれば、見えない理由と確認できる工程を記録します。構造上目視が困難な材料は、確認可能になった時点で事前調査を行うため、工事担当者と調査者の連絡時期を決めます。

調査者の資格を確認する

加熱炉の告示区分と着工日を確認する図
加熱炉の告示区分と着工日を確認する図

加熱炉に係る調査では、対象設備、資格区分、着工日を対応させます。資格名だけを確認するのではなく、誰が炉のどの範囲を調査するかを見積と調査記録で確認します。

工作物の資格区分

告示第276号第4号は、告示第278号第1号から第5号および第7号から第11号の工作物について、工作物石綿事前調査者が調査を行う区分を定めています。加熱炉は第2号に掲げられるため、設備の該当性を確認した上で、調査を行う者の資格証明と対象範囲を依頼先に確認します。

着工日を基準に確認する

工作物の解体・改修に関する資格者調査の扱いは、2026-01-01以降に着工する工事を基準に確認します。見積日や契約日ではなく、実際に工事へ着手する日と、対象設備の範囲を工程表で確認します。

発注時にそろえる情報

加熱炉の設計図書設備台帳工事範囲をそろえる図
加熱炉の設計図書設備台帳工事範囲をそろえる図

発注時に資料をそろえる目的は、設備の状態を発注側だけで判断することではありません。現地確認が必要な部分、工事で初めて見える部分、資料で確認できる部分を調査者に伝え、記録と工事範囲を照合できる状態にします。

設計図書と設備台帳

設計図書、設備台帳、改修図、点検記録があれば、炉の名称、用途、設置場所、過去の更新時期を確認します。資料の版や作成年が分かると、どの設備に対応するかを確認しやすくなります。資料がない部分も、そのまま依頼内容に記載します。

現地写真には、撮影場所、方向、炉体のどの部分かが分かる情報を添えます。写真や台帳だけで材料の石綿使用の有無を発注側が決めず、調査対象となる部位を共有する資料として使います。

改修・撤去の工事範囲

炉体の解体、炉内の補修、配管の切断、周辺の保温材の更新など、予定する作業を部位ごとに記載します。工事範囲が変更される可能性がある場合は、未確定の範囲も分けて伝えます。見積の対象と調査記録の対象が一致するかを確認します。

工事の途中で露出する部分は、最初の調査で確認できた部分と区別します。どの工程の後に確認可能になるかを工程表に記し、追加確認が必要になった際に、対象位置と調査方法が分かるようにします。

調査後に確認する記録

調査終了後の記録には、調査した部分、調査方法、材料ごとの石綿等の使用の有無、石綿なしと判断した根拠、調査を行った者と資格に関する事項が残ります。設備台帳の番号、図面上の位置、記録の部位名が対応しているかを確認します。

炉の周辺に異なる設備や建屋の材料がある場合は、記録の対象を炉本体、接続部、周辺部のどこまでとしたかを確認します。調査結果を受け取る際には、工事仕様書にある撤去・補修の部位と、記録にある部位名を一つずつ照合します。工事の変更で新しい箇所に触れることになった場合は、既存の記録で確認済みの範囲と新たに確認する範囲を分けます。停止時期が限られる設備では、結果を確認する日も工程表に残します。

炉の稼働状態が調査日までに変わる場合は、依頼書に記載した停止条件や立入り条件と異なる可能性があります。現地の状態が資料と違うことに気付いたときは、設備番号、部位、写真の位置を調査者へ共有します。炉の一部を残す計画に変わる場合も、取り外す部位と残す部位を分け、既存の調査記録がどこまでを対象としているかを確認します。材料の結論だけでなく、確認できた範囲を工事資料と対応させることが、発注後の変更を整理する助けになります。

プラント設備のアスベスト事前調査、特定工作物のアスベスト調査、アスベスト調査会社の選び方では、設備の調査範囲と依頼内容の整理を確認できます。関連する記事は事例・ケースから探せます。

加熱炉の工事範囲と調査記録を照合する図
加熱炉の工事範囲と調査記録を照合する図

加熱炉の改修では、設備の名称、現地の表示、図面の機器記号が異なることがあります。調査依頼に三つの対応関係を添え、どの炉とどの周辺部材を対象にするかを調査者と工事担当者の間で確認します。

工事対象の表現を変える場合は、図面と見積の名称も更新し、調査記録にある部位との対応を確認します。

加熱炉は、改修の順番によって確認できる場所が変わることがあります。炉体の一部を残す、配管だけを先に外す、周辺の建屋側を先に改修するなどの計画がある場合は、各工程で触れる部位を資料に分けます。調査の対象と工事対象がずれないよう、工程表の部位名、設備台帳の番号、調査記録の位置を照合します。確認できない材料がある場合は、見える状態になる作業の後に確認する段取りを依頼先と共有します。

加熱炉の図面が複数ある場合は、設置時の図面、改修時の図面、設備台帳を分けて渡します。炉の名称、機器番号、設置場所、工事する部位を同じ一覧に置くと、現地で使う呼び方と資料上の呼び方が異なる場合にも対象を確認できます。炉体の周りに工事対象外の配管や設備があるときは、それらを対象に含めない理由も工事仕様書と照合します。現地確認の結果で工事範囲が変わる場合には、図面と記録の対象を更新します。

炉の周辺で設備更新と建屋の補修を同時に行うときは、炉に係る部位と建屋側の部位を図面で分けます。調査の記録にある炉の位置、配管の経路、周辺部材を工事仕様書の対象と照合し、後から追加する工事を既存の範囲に含めないようにします。

よくある質問

Q. 加熱炉ならすべて同じ扱いですか
同じ扱いとは限りません。告示に掲げられる加熱炉に当たるかは、設備名だけでなく、用途、構造、設置場所、工事対象部分を設計図書等で確認します。炉本体と周辺部材も分けて整理します。
Q. どの資格者に依頼しますか
加熱炉が告示第278号第2号に当たる場合は、告示第276号第4号の工作物石綿事前調査者による調査を確認します。2026-01-01以降の着工か、資格証明と調査範囲が対応しているかを依頼先に確認します。
Q. 設備台帳がない場合はどうしますか
現にある図面、写真、改修履歴、設備の用途、設置場所、工事範囲を整理して共有します。資料がないことを伝え、現地で確認する部位と、工事で初めて確認可能になる部位を依頼先と確認します。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

  1. 1.
    石綿障害予防規則(laws.e-gov.go.jp)
  2. 2.
  3. 3.