工場・プラント閉鎖時のアスベスト調査|設備解体の段取り
著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
工場・プラント閉鎖時のアスベスト調査|設備解体の段取り
工場・プラントの閉鎖に伴う設備解体では、建築物と工作物を分け、設備ごとの資格区分と手続を早めに整理します。閉鎖の計画では、建屋の解体・改修と、設備や工作物の撤去が同じ敷地・同じ工事計画に含まれることがあります。対象を一つの名称でまとめず、工事範囲ごとに調査と手続を確認することが重要です。
特定工作物の名称は令和2年厚生労働省告示第278号が17種を定め、調査を行う者の区分は令和2年厚生労働省告示第276号が10種と7種に分けて定めています。以下は特定の工場や企業の事例ではなく、閉鎖に伴い建屋と設備を同時に対象とする場合の一般化した確認順です。
工場・プラント閉鎖で先に分ける対象(早見表)

閉鎖時の調査計画では、建屋の部分と設備・工作物の部分を先に分けます。令和2年厚生労働省告示第278号の17種は、土地、建築物又は工作物に設置されているもの又は設置されていたものに限ると定められています。
| 分ける対象 | 確認する資料 | 発注時に伝える事項 |
|---|---|---|
| 建築物の部分 | 図面、改修履歴、解体・改修範囲 | 工事対象の床・壁・天井など |
| 設備・工作物の部分 | 設備台帳、配置図、設備名称 | 撤去・改修する設備の範囲 |
| 共通する工程 | 着工予定、現場条件、工程表 | 調査日、目視が難しい部分、提出書面 |
建築物の部分と設備・工作物の部分を分けて整理する
閉鎖に伴う工事で建屋と設備を同時に扱う場合でも、事前調査では対象部分を分けて整理します。石綿障害予防規則第3条第1項は、解体等の作業前に、解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無を調査することを定めます。調査は設計図書等の文書と目視による確認を基本とするため、建屋の資料と設備台帳を別々に集めると工事範囲を共有しやすくなります(石綿障害予防規則、2026年9月6日確認)。
同じ敷地にあることだけで、建築物の部分と設備・工作物の部分の区分は決まりません。設備の個別該当性は名称から断定せず、図面、設置状況、撤去範囲を確認して所轄窓口などに確認します。
特定工作物17種と10種・7種の資格分岐を確認する
令和2年厚生労働省告示第278号は、反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備、焼却設備、煙突、貯蔵設備、発電設備、変電設備、配電設備、送電設備などを含む17種を定めています。配管設備は建築物に設ける給水・排水・換気・暖房・冷房・排煙設備等を除き、煙突は建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除きます。貯蔵設備は穀物用を、発電設備は太陽光発電設備・風力発電設備を除くなど、設備別の除外規定もあります(令和2年厚生労働省告示第278号、2026年9月6日確認)。
調査者区分を定める令和2年厚生労働省告示第276号は、第278号第1号から第5号まで及び第7号から第11号までの10種を第4号、第278号第6号及び第12号から第17号までの7種を第5号に振り分けています。第4号は工作物石綿事前調査者、第5号は一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者又は工作物石綿事前調査者の区分です(令和2年厚生労働省告示第276号、2026年9月6日確認)。この区分による工作物の資格者調査は、2026年1月1日以降に着工する工事から施行済みです。
閉鎖・設備解体の段取り

閉鎖時は、設備の撤去順や建屋の工事範囲が固まる前から資料を集めます。調査対象が後から追加されると、調査者区分、報告、届出の確認もやり直しになるためです。
設備台帳、図面、改修履歴、工事範囲を集める
発注者は、設備台帳、配置図、建屋の図面、改修履歴、閉鎖に伴い解体・改修する部分の一覧をそろえます。設備の名称、設置場所、撤去か改修か、予定する着工時期を並べると、建築物と工作物の対象を切り分けやすくなります。資料がない部分は、その旨を依頼時に共有し、文書と目視による確認の対象に含めます。
設備保有者が確認する対象と資格区分の考え方は、プラント設備の事前調査 で詳しく整理しています。閉鎖計画では、その内容を設備台帳の一覧と結び付けることで、調査を依頼する範囲が明確になります。
調査者区分、調査、報告・届出の要否を確認する
資料を整理したら、工事対象に合う調査者区分を確認し、調査、事前調査結果の報告、届出の要否を別々に確認します。石綿障害予防規則第4条の2第1項は、特定工作物の解体工事又は改修工事で請負代金が100万円以上の場合に、事前調査結果の報告を定めています。同条は建築物の解体・改修についても別の規模要件を置くため、建屋と設備を一つの基準で判定しません(石綿障害予防規則、2026年9月6日確認)。
届出対象特定工事に当たる場合の届出は、発注者または自主施工者が行います(大気汚染防止法第18条の17第1項、同法、2026年9月6日確認)。閉鎖の工程表には、調査結果の確認、報告、届出の役割を別々に置きます。
発注時にそろえる確認項目

発注時には、調査の対象範囲に加え、採取対応、報告書、工程上すぐに目視できない部分の扱いを確認します。閉鎖に伴う複数の工事を同時に計画する場面では、誰がいつ確認するかを見積と工程表の両方で共有します。
採取対応、報告様式、工程上の目視困難部分を確認する
見積では、現地での採取対応の有無、分析が必要になった場合の扱い、調査結果を記録する書面、調査者名と資格証明書の写しを確認します。石綿障害予防規則第3条第7項の記録には、材料ごとの石綿等の使用の有無、石綿等が使用されていないと判断した材料の根拠、調査者の氏名、資格証明書の写しが含まれます(同規則、2026年9月6日確認)。
目視により確認することが困難な材料は、確認が可能となった時点で事前調査を行うと定められています(石綿障害予防規則第3条第9項)。閉鎖工程で露出する予定の部分がある場合は、工程に沿った確認の扱いを依頼時に整理します。
一般化したシナリオでの確認順

ここでは、閉鎖に伴い建屋と設備を同時に対象とする場合を、一般化したシナリオとして整理します。実在する工場の経験談や個別案件の結論ではなく、発注者が資料と役割を分けて確認する順序です。
建屋と設備を同時に対象とする場合の役割整理
最初に発注者は、建屋の工事範囲と設備の工事範囲を一覧に分け、図面と設備台帳を対応させます。次に、調査を行う元請業者への資料提供、調査者区分の照合、調査結果の書面説明を確認します。大気汚染防止法第18条の15第1項では元請業者が調査を行い発注者へ書面を交付して説明し、同条第2項では発注者が費用の適正負担などにより調査へ協力すると定めます(大気汚染防止法、2026年9月6日確認)。
その後、建屋と設備のそれぞれについて、報告・届出の要否と主体を確認します。特定工作物17種と区分の詳細は、特定工作物17種と資格区分 に委ね、閉鎖計画では対象の混在を見落とさないことに重点を置きます。
よくある質問

閉鎖計画では、設備名だけで区分を決めず、建屋と設備の対象範囲を分けて資料をそろえます。手続の要否も、調査者区分とは別に工事ごとに確認します。
設備が特定工作物かはどう確認するか
令和2年厚生労働省告示第278号の正式名称と除外規定を照合します。個別の設備がどの区分に当たるかは、名称だけで断定せず、所轄窓口などで確認します(令和2年厚生労働省告示第278号、2026年9月6日確認)。設備台帳と配置図をそろえて照合します。
建屋と設備をまとめて発注する場合の調査範囲の分け方
建築物の部分と特定工作物の部分では確認する調査者の区分が別に定められているため、工事範囲を分けて整理したうえで依頼します。報告の要否も、建築物解体の床面積と工作物の請負代金でそれぞれ判定します(石綿障害予防規則第3条第4項、第4条の2第1項、同規則、2026年9月6日確認)。同じ発注書に含める場合でも、対象区分と確認資料は分けて管理します。
閉鎖の工程でいつ手続を確認するか
工事範囲と着工予定を整理した段階で、事前調査、事前調査結果の報告、届出の要否と主体を別々に確認します(石綿障害予防規則第4条の2、大気汚染防止法第18条の15、第18条の17、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、2026年9月6日確認)。工程変更で対象が増える場合は、確認範囲も更新します。
まとめ
工場・プラントの閉鎖では、建屋の部分と設備・工作物の部分を先に分け、設備台帳、図面、改修履歴、工事範囲をそろえます。特定工作物17種と10種・7種の資格分岐、報告・届出の主体を別々に確認することで、同じ敷地に混在する対象を整理できます。
次に読む記事として、事例・シーン別カテゴリの一覧、特定工作物17種と資格区分、解体前調査の工程、プラント設備の事前調査、煙突の調査資格と確認点 を確認してください。
出典
- 令和2年厚生労働省告示第278号(mhlw.go.jp)
- 令和2年厚生労働省告示第276号(mhlw.go.jp)
- 石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)(laws.e-gov.go.jp)
- 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)(laws.e-gov.go.jp)
著者・監修
依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表
依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。石綿障害予防規則の事前調査義務・資格者制度・調査費用の構造について、e-Gov・厚生労働省等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。
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